775ライブラリーFMにて5月6日(土)午後4時から「宇宙戦艦ヤマト」の音楽だけを扱った4時間の特別番組「ラジオ・スイート 宇宙戦艦ヤマトIII」が放送されました。(好評につき5月21日の零時からも再放送されました)
「ラジオ・スイート 宇宙戦艦ヤマト」は5年前の2018年から毎年(2021年除く)5月のゴールデンウィーク期間に775ライブラリーFM(旧クローバーラジオ)にて放送されるヤマト劇伴音楽の特集番組で、漫画家のむらかわみちお先生、サウンドトラック愛好家の新造戦艦アンドロー梅田さん、ヤマト音楽研究サイト代表の福科考∞譜観さんの劇伴大好きのご三方が中心となって手弁当で制作して下さっている番組です。
今年で第5弾となる「ラジオ・スイート 宇宙戦艦ヤマトⅢ」は5回目なのにタイトルが「宇宙戦艦ヤマトⅢ」(スリー)なのは、宇宙戦艦ヤマトの作品として5作目ということで「ラジオ・スイート 宇宙戦艦ヤマトⅢ」とタイトルされています。
今までの放送では毎回、庵野秀明氏や灰原信義氏、宮川彬良氏、ささきいさお氏ら豪華ゲストの方々が招かれていましたが、今回のゲストはヤマトの新作シリーズの脚本も手がける福井晴敏さんが招かれました。
MCはナナコ局の倉嶋桃子さんが担当していますが、むらかわみちお先生が司会進行役もしているので、あまり聞く機会が無いむらかわ先生のお声(イケボです)も聞くことが出来ます。(このラジオ番組でのむらかわ先生の本来のメインの作業は企画内容の提案、ラジオ局との折衝、スポンサー探しと交渉、ゲスト依頼、権利者サイドとのやり取り、日程調整、資料作成、金銭管理、リクエスト集計、そして放送音源の編集、キューシート作成、など多くの間接部門の作業だそうです。むらかわ先生のブログより)
企画の決定や選曲、リクエストのチョイスなど番組内容の部分は、アンドロー梅田さん、福科考∞譜観さんが担当しているようです。
この記事では第三部の福井氏のゲストコーナーを中心に4時間の番組「ラジオ・スイート 宇宙戦艦ヤマトⅢ」の放送内容をご紹介します。
第一部、第二部は「愛」をテーマにそれぞれの愛「友愛」「男女の愛」「偏愛」「自己愛」「家族愛」「禁断の愛」「祖国愛」「大いなる愛」を表現した曲が全てのヤマト作品の中から選曲され紹介され、その曲のBGMシーンなどについて語られました。
紹介される多くの曲はヤマトファンであれば、すぐに使用されたそのシーンを思い浮かべることの出来る曲ばかりです。曲が流れた後にその各シーンについて語るむらかわ先生達の会話を聴いていると、同じヤマトファンとして思わず「そうそう」とニヤニヤしてしまいます。
また、第二部最後にはおそらく個人的な所有物であろう録音テープから「宇宙戦艦ヤマトⅢ」放送前の特番時の若かりし日の西崎義展氏の貴重なコメントや堀江美都子さんが歌う「宇宙戦艦ヤマトⅢ」エンディング曲「別離」(曲の終わりにはヤマトグッズを81年お年玉プレゼントのナレーションも!応募ハガキは当時放送局であった「よみうりテレビ」宛のようです)が紹介されました。
第三部はゲストコーナーとして福井晴敏氏を迎え、福井氏の印象に残っている曲や新作「ヤマトよ永遠にREBEL3199」の情報が語られました。
ヤマト作品中で福井氏の好きな曲調として「ヤマトよ永遠に」からの「二重銀河」が最初に紹介されました。「二重銀河」のゴージャスさ、そして、曲が画面を引っ張っていくというところがお気に入りなのだそうです。
リスナーから「宇宙戦艦ヤマトⅢ」放送当時の福井氏の思い出について質問があり、福井氏は「ヤマトよ永遠に」は劇場鑑賞をして心に刺さる程ドンピシャだったのが、数ヶ月後にテレビ放送された「宇宙戦艦ヤマトⅢ」は第三話以降を見ること無く「機動戦士ガンダム」に興味の対象が移っていってしまったと述べられました。笑
後日、21世紀になって初めて「宇宙戦艦ヤマトⅢ」をDVDで全話を見ることになって、当時、気がつかなかった「宇宙戦艦ヤマトⅢ」の渋さを受け入れ、また、最新のリメイクヤマトも「宇宙戦艦ヤマトⅢ」が当時やろうとしていたことを踏襲していることに気づいたと話しています。
また、福井氏は「ヤマトよ永遠に」と「宇宙戦艦ヤマトⅢ」を今振り返って見ると「ヤマトよ永遠に」は理屈を後回しにして娯楽性を大切にした作品なので、観ていて楽しい作品ではあったが、「宇宙戦艦ヤマトⅢ」の方が実はストーリーはしっかりしていると述べています。
「ヤマトよ永遠に」では観客を楽しませるために、これでもかと娯楽要素(古代と雪の離れ離れのメロドラマ等)を物量戦のように入れているところが良いところであり、今回の「REBEL3199」でもこの「物量」を継承しているとのことでした。
その後、福井氏の小説家として「終戦のローレライ」が紹介され、「終戦のローレライ」に登場する潜水艦「伊五〇七」のデザインやカットイン、カットアウトが(監督は樋口真嗣監督)「宇宙戦艦ヤマト」から影響されていると福井氏から述べらました。笑
むらかわ先生からは「終戦のローレライ」と石津嵐版小説「宇宙戦艦ヤマト」の類似点が質問されましたが、福井氏は石津嵐氏の小説「宇宙戦艦ヤマト」は未読とのことでした。
そして、「2202」に登場するキーマン誕生秘話として「ローレライ」に登場するフリッツとの関連性等が明かされ、むらかわ先生もキーマンがストーリーに配置されていることにより「2202」という作品の構図が引きだったと感想を述べていました。
また、「機動戦士ガンダム」と「宇宙戦艦ヤマト」両作に関わる福井氏にとってそれぞれの作品の続編について、どういうスタンスで向き合っているかという話題では、「個」がシステムの中心となる「機動戦士ガンダム」と「集団」のシステムである「宇宙戦艦ヤマト」として各作品を捉え、現代社会は「ガンダム」の時代ではなく「ヤマト」の時代ではないかと述べています。
つまり、バブル経済崩壊後の失われた30年の中、今の日本では人々は「個人」の見識を高めるべきだと思いながらもどうしたらよいのかわからず、まだまだ「集団」のシステムに引きづられており、特に高度成長時代をひきづった人々が東日本大震災後に右往左往する姿は平穏無事であった地球の人々がガミラスの地球侵攻後の度重なる来敵に右往左往する姿に重なるのではないかと語っています。
そして、福井氏からのリクエスト曲として、故神田沙也加さんの「月の鏡」が紹介されました。
次に選曲された福井氏からのリクエストは「宇宙戦艦ヤマト2202」から「大いなる愛」でした。
「大いなる愛」についてのエピソードとしては「さらば宇宙戦艦ヤマト」のリメイクをオファーされた初日にオーダーされたという「特攻してはダメ」(死なすな)、けれども「さらば宇宙戦艦ヤマト」にしなくてはいけないという制約の中で、ラストをどうするかを脚本の岡秀樹氏と(居酒屋で)熟考を重ねる中、旧作ラストの死地へ向かうシーンに使用された曲「大いなる愛」を新作では古代と雪を『逆に』死地?から「帰還」するためにヤマトで迎えに行くというシーンに使用しようと決めたそうです。
この「大いなる愛」という曲が無ければ「宇宙戦艦ヤマト2202」は成立しなかったと語っています。
また、この曲によって「2202」作中の古代と雪、そして旧作「さらば宇宙戦艦ヤマト」ラストで死地へ旅立ってしまった40年前の古代と雪をも呼び戻すことが出来るという『シンクロ』をヤマトファンには感じて欲しいとも語っています。
「交響組曲宇宙戦艦ヤマト2202」からは「三章 白色彗星 白色彗星の系譜(キース・エマーソンに捧ぐ) 大帝ズォーダー」が福井氏からリクエストされました。宮川彬良氏と彬良氏のお父様である故宮川泰氏とのエピソード(親子で聴いていたキース・エマーソンの思い出等)が紹介されました。
「宇宙戦艦ヤマト2205」については「若き翼たち (「コスモタイガー」より)」のエピソード、そして福井氏のお気に入り「ボラー」が紹介されました(「ボラー」は新作3199にも使用されるそうですよ)。
そして、新作「ヤマトよ永遠にREBEL3199」のテーマ曲は、「2199」の「大いなる愛」と同じように旧作とは全く違う意味合いを持つそうですが、ズバリ、旧作「ヤマトよ永遠に」の主題歌であった布施明氏の「愛よその日まで」だそうです(布施明氏再登板かも!とのこと)。個人的には旧作「ヤマトよ永遠に」公開時、エンディングシーンに感動しEPレコードを購入した思い出があるくらい大好きな曲なので嬉しいです!
最後に最新作の情報ということでは、福井氏から具体的な話はありませんでしたが、74年版からヤマトを見続けて来た人、リメイク版からヤマトを見始めた人、どちらの人にも今までヤマトを観てきて良かったな、そして、その今まで観てきたヤマトに句読点を打つことを感じることが出来るような作品にしたいとのことでした。
最後、第四部はリスナーからのリクエスト曲が紹介され、4時間に渡る特別番組「ラジオスイーツ宇宙戦艦ヤマトⅢ」は惜しまれながらも終了。今年も楽しませてもらった充実した4時間でした。来年のオンエアも楽しみですね。
コメント