公開当時
今年も8月がそろそろ終わろうとしていますが、今から42〜5年前の8月は宇宙戦艦ヤマトや銀河鉄道999が毎年劇場公開され、8月と言えばアニメを劇場へ観に行くという時期でした。
1977年8月6日 劇場版「宇宙戦艦ヤマト」公開
1978年8月5日 「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」公開
1979年8月4日 劇場版「銀河鉄道999」公開
前年度公開された「銀河鉄道999」の大ヒットによるアニメブームの中、1980(昭和55)年8月2日に劇場公開された「ヤマトよ永遠に」は79年に日本テレビ系列で放送されたテレビスペシャル「宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ち」の続編として製作されました。
公開前の7月には「ヤマト アドベンチャーロマンの航海」と謳った川崎埠頭から宮崎日向への2泊3日のクルーズや当時国鉄だったJRのミステリーツアー「イカルス号・冒険と探検の3日間」というイベントを開催し、昨年ヒットした「銀河鉄道999」超えのヒットを狙っていましたが、同年6月に公開されていた大作「スターウォーズ 帝国の逆襲」「復活の日」、そして「ヤマトよ永遠に」と同日に公開された「二百三高地」(ちなみに「二百三高地」の監督である舛田利雄監督は「ヤマトよ永遠に」の監督でもあります)などの影響もあり、配給収入は13億6千万円となり昨年度邦画配給収入1位だった「銀河鉄道999」の配給収入16億5千万円には及びませんでした。
ネタバレ全くなしのあらすじ
「新たなる旅立ち」で登場した新たな敵である暗黒星団帝国の本星からの攻撃を受けた地球の危機を救うべくヤマトが敵本星へ向かうというストーリーですが、暗黒星団帝国とヤマトの戦いとヤマトへ向かう際に地球で離れ離れになってしまった古代と雪のそれぞれの話が中心となった展開になっています。
ファン離れ
あらすじにも述べましたが、ストーリーの中心では古代進と1年で17歳になったサーシャ(スターシャと古代守の娘)のヤマト艦内で育まれる血縁でありながらも、それだけに止まらないサーシャの古代への微妙な想い、一方、地球脱出の際、傷を負い地球に取り残され捕虜となってしまった森雪が敵である暗黒星団帝国の将校アルフォン少尉から重核子爆弾の秘密を知るためにアルフォン少尉からの求愛を葛藤しながらも受け入れ、自害を図ろうとする自己犠牲の愛(貧しい家族を助けるために売られる村娘か!?)が進行していきます。
「宇宙戦艦ヤマト」というSFアニメを劇場へ観に来ているのに、西崎義展氏の個人的な趣味と思われる『男と女の愛のメロドラマ』を延々と見せられてしまうのです。元々、西崎氏は「SF」よりも「ロマン」が好きな人物でしたので、今回はSFよりもロマンよりのメロドラマ展開になってしまったように思われます。
ちなみに、森雪は1作目「宇宙戦艦ヤマト」では自分の命を犠牲にして古代を救うために未完成のコスモクリーナーを発動させ、2作目「さらば宇宙戦艦ヤマト」ではミルの銃撃から古代を庇って重傷を負い、今回の「ヤマトよ永遠に」では古代が生きていることを信じながらも敵の将校の手に落ちることを決意するなど、ヤマト作品ではいつも森雪は愛する人のためには自己犠牲を厭わないというスタンスを取り続けています。
西崎氏の趣味と推測される点としてもう一つ、森雪の白いスーツ姿が挙げられます。当時の西崎氏の会社の女性秘書たちは西崎氏の指示でタイトスカートの上下白のスーツを着用していたようなのですが、森雪の地球防衛軍での制服は白のタイトスカートのスーツ姿でした。(ちなみに森雪はストーリー後半でレジスタンスとして戦闘する時も上下白のパンツスーツで迷彩戦闘服の男性レジスタンスと一緒に闇に紛れて敵陣地に攻め込みます(目立ちすぎでしょ)。
「さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち」でヤマトとの永遠の別れに涙を流したにも関わらず、すぐにヤマトの続編の製作発表がされ、裏切られた気持ちとその反面ヤマトの新しいストーリーを再び見ることが出来るという喜びが入り混じった複雑な気持ちを持つ多くのヤマトファンやSF・リアル志向の古くからのヤマトファンは、このメロドラマ展開の「ヤマトよ永遠に」に大変失望したものでしたが(これに似たようなムーブメントを近年「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」の際にも窺えました)、ストーリーの多くのシーンで見られるご都合主義と演出の酷さにもガッカリするのでした。
例えば、地球を無事脱出した元ヤマトクルー達へ地球に残る藤堂地球防衛長官から連絡が入り、森雪の行方不明と古代守の犠牲の報告があっても、古代守の親友であった真田さんはおろか弟の進でさえ守の死に対する感情を表現する演出はスルーされ、重核子爆弾の外観を映像で見た真田さんが直ぐに爆弾の危険性を理解し、重核子爆弾の起爆装置を破壊するためには敵本星へ行かなければ破壊出来ないと瞬く間に看破するという展開はビックリですし、ストーリー大詰めでは「さらば宇宙戦艦ヤマト」から続く『非常に危険な』ヤマト艦長席で新艦長の山南艦長が敵の攻撃を受け、前任の土方艦長と全く同じように何の前触れも無く突然退場することとなり、無理やり?古代にヤマトの指揮権が移行されます。
ヤマトよ永遠に REBEL3199
リメイクされた宇宙戦艦ヤマトシリーズの最新作となる「ヤマトよ永遠にREBEL3199」は現在まだ公開されていませんが、「宇宙戦艦ヤマト2205新たなる旅立ち」の続編、そして「ヤマトよ永遠に」のタイトルがあることより旧作の「ヤマトよ永遠に」を受けてのストーリーとなるのでしょう。リメイク作の「宇宙戦艦2202」から引き続き「宇宙戦艦ヤマト2205」、「Rebel3199」のストーリー構成・脚本を担当している福井晴敏氏が「宇宙戦艦ヤマト2202」で「愛」という言葉を中心に話が展開させていたことを考えると、「Rebel 3199」でも再び「愛」がクローズアップされる可能性もありますね。旧作の「ヤマトよ永遠に」では『愛し合う二人が離れ離れになっても信じる愛』というのがクローズアップされすぎてメロドラマ化してしまいましたから、「Rebel3199」がメロドラマ化しないことを祈るのみです。(ちなみに古くからのファンからも人気の高い出渕裕監督作品の「宇宙戦艦ヤマト2199」でも古代と雪が離れ離れになってしまう後半からはファンの意見が賛否両論です笑)
旧作では敵、暗黒星団帝国の人間の体は首から下は機械の体でした。「宇宙戦艦ヤマト2202」にて波動実験艦「銀河」のクルーが手足のサイボーク化を希望する話があったことを踏まえると、AI主導のG計画が発動したIFの世界線上の3199では地球人は首から下がサイボーグ化し、コスモリバースシステムの研究の結果、時間断層を利用して、他世界線へのジャンプが可能になったという案も考えられますね。でも、宇宙戦艦ヤマトの存在を「宇宙戦艦2205」の敵デザリアムのメルダーズには認識されていなかったので、違う名前の宇宙戦艦が2199年にイスカンダルへ行ってコスモリバースシステムを受け取った地球という世界線なのでしょうか?
おまけ
「ヤマトよ永遠に」の主題歌・名曲「愛よその日まで」を歌っていた布施明さんは「男女七人秋物語」の主題歌「Show me」を歌っていた森川由加里さんと2013年に再婚していたんですね。(歳の差、16歳!)
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