最近、〇〇周年ということで数多くの作品が数十年ぶりに注目をされ、各作品のファンの方々から懐かしい思い出が語られていますが、この記事では、今年で20周年にも関わらず何故かあまり注目されていない(?)「銀河鉄道物語」を紹介したいと思います。
先日の記事(20周年なのに、あまり話題になっていないアニメ「銀河鉄道物語」シリーズについて②)ではTBSで放送された第2シリーズ「永遠の分岐点」の第24話までを紹介しましたが、この記事では第2シリーズ「永遠の分岐点」の第25話と第26話を紹介いたします。
第2シリーズ「永遠の分岐点」の第25話「我が心のシリウス小隊・前編」第26話「我が心のシリウス小隊・後編」は前述の通りTV放送がされておらず、2007年6月に発売されたDVD「銀河鉄道物語~永遠への分岐点~ 第1集 」に第25話が、2007年8月に発売されたDVD「銀河鉄道物語~永遠への分岐点~ 第2集 」に第26話が映像特典として収録されているのです。
第25話と第26話は今までのTVシリーズと全く違った展開のストーリーとなり、ダークィーン配下である別宇宙から出現したメタノイド軍との戦いが描かれます。
(ネタバレ)
(第25話)
デスティニーで学とルイが射撃訓練に勤しむ頃、オリオン大環状線上に正体不明の宇宙艦艇群が出現し、空間軌道を消滅させてしまいます。ケフェウス小隊、シリウス小隊がオリオン大環状線の軌道に到着するも、他の全空間軌道上にも同様の宇宙艦艇群が多数出現し、宣戦布告と侵攻が始まります。空間を喰らうという未だかつて無い攻撃にケフェウス小隊らは防戦を強いられますが、敵指揮官、メタノイド・センチュリアン、ツイストバレルは攻撃を受ける仲間を守るために自己犠牲を払い散っていく敵の姿を見て突如、後の襲来を告げる通信を残し敵艦艇群は撤退するのでした。
未知の敵との熾烈な戦いが予測される出撃を前に、バルジ隊長は各隊員に休暇を与えます。それぞれの想い人を想いながらも結局はシリウス小隊の仲間達がいつも集うバーに集まってしまうバルジ隊長や学達。しかし、学やルイらシリウス小隊と一緒に安らぎのひと時を過ごしていた医療用セクサロイドのユキは皆の前で突然倒れてしまうのでした。
(第26話)
異変が起こり倒れてしまったユキはラボに運ばれますが、ユキのAIに過去例を見ない不具合が生じており、その原因究明・解析を行うよりも速やかな職務復帰を優先し、ユキのAIをオーバーホールの上、再配属することが決定されます。それはユキの今までの記憶を全て消去し、ユキのシリウス小隊所属を抹消することを意味します。ユキは単なるセクサロイドでは無いと憤る学ですが、ユキは銀河鉄道株式会社の所有する備品であると言われてしまうのでした。そして、シリウス小隊の面々はユキとの別れに落胆しながらも未知なる強大な敵への迎撃待機に就くのでした。
ラボではユキの処置が開始され始めますが、そこへ銀河鉄道を統括する銀河鉄道管理局総司令官であるレイラ・ディスティニー・シュラが現れ、ユキの処置を取り止めを命じ、ユキの記憶守られるのでした。
意識の戻ったユキはレイラが側にいることに驚きます。そして、レイラ総司令は未処置である自分の不具合を心配するユキに対し、それはユキに組み込まれているDNAチップのオリジナルモデルである女性の奥底に眠る意思が強く感じ始められていることが原因であり、その不具合は何かの予兆であり、きっと何か意味のあることに違いないと安心させるのでした。
そして、ユキに『遥か昔、たった一隻で母なる星を仲間達と共に侵略者から守った船』に乗っていたそのオリジナルデザインの女性のように、ユキも大切な仲間たちのいるシリウス小隊に戻りなさい」と諭し、ユキをシリウス小隊へ復帰させるのでした。
記憶を抹消されず、昔のままのユキの復帰に喜ぶシリウス小隊の面々でしたが、宇宙ではメタノイドの大艦艇群が再び出現し、SDFでは全銀河・全星系の防衛艦隊と連携した防衛命令が発令されます。
全銀河・全星系による大物量による連合艦隊の奮戦も虚しく、メタノイド大艦艇群の圧倒的そして「空間を喰らう」という恐るべき攻撃により甚大な被害が拡大する中、シリウス小隊のビッグワンは形勢を逆転させる活路を開く為、ある銀河系連合艦隊旗艦からの大火力の援護射撃と同時にメタノイド旗艦へ小ワープし旗艦内部からの破壊を試みるのでした。
旗艦内部に突入したビッグワンはシリウス小隊による白兵戦に臨みます。ルイ達は動力源へ、学は司令室へとメタノイド下級兵を倒しながら向かいます。ユキはメタノイド兵による攻撃で負傷した仲間を治療しながら学の後を追います。そして、学はついにメタノイド・センチュリアンのツイストバレルと対峙するのでした。
銃を失った学を一気にトドメを刺そうと銃を向ける副官を制し、ツイストバレルは「許せ、貴様達が憎いわけではない」と語りながら自ら学を葬ろうします。学は「俺たちはこの宇宙で生きる。生きるために全ての命が生きてことを成し、その証を残すために存在する。死ぬためじゃない。殺し合いをするために生まれて来たんじゃない」とツイストバレルに強く訴えるのでした。
ツイストバレルは学の訴えに構えていた銃を下ろし、「無の宇宙」では「死は無であり、死は永遠の別れである」、「生まれ変わること。時の輪の存在を信じる」ことの出来る学達の宇宙とは根源的に違うと語るのでした。
ツイストバレルと学のやりとりにイラつく副官は反旗を翻し、ツイストバレルを撃ち倒そうとしますが、近くにいたユキが咄嗟にツイストバレルに駆け寄り、身を挺して守るのでした。
「我々の宇宙では戦える者が全てにおいて優先される」という世界の戦闘種族であるツイストバレルにとっては、負傷したユキを気遣う学とルイの姿や、飛龍を守る為に身を挺した艦艇など「傷ついた仲間を守る」という敵の精神性を理解出来ず、再び戦闘の中止を告げ、全軍を引き自分達の宇宙へ去って行くのでした。
そして、全銀河連合艦隊も撤退し、シリウス小隊はメタノイドという脅威を感じながらも通常業務に戻るのでした。一方、ツイストバレルはダークィーンの元に謁見し、いかなる裁きも受け入れると陳謝するのでした。(終わり)
以上が第25話、第26話の大きなあらすじなのですが、小説版「銀河鉄道999 アルティメット ジャーニー」で展開される「ヤマト」「ハーロック」「エメラルダス」「まほろば」等の全ての松本作品(マゾーン等全ての敵側陣営も含む)の「光の宇宙」全銀河連合軍とダークィーン勢力の「無の宇宙」との最終決戦に繋がるクリフハンガー的なストーリーとなっていると言えるでしょう。
ちなみに2012年、2013年に発刊された「銀河鉄道999アルティメット ジャーニー」(上下巻)では「宇宙戦艦ヤマト」に関係する記述が書かれていたのですが、2021年に発刊された改訂版では全ての「宇宙戦艦ヤマト」関連部分が大人の事情からか削除されています。(「銀河鉄道999 アルティメットジャーニー」の昔の記事はこちら)
↓オリジナル版は高値で取引されています。
この「銀河鉄道物語」第2シリーズ第25話、第26話の制作時(2007年)には「宇宙戦艦ヤマト」裁判で勝利し著作権を持っていた西崎義展氏もまだご存命でしたから、もしかしたら、直接には「宇宙戦艦ヤマト」という言葉の使用をさせないものの「宇宙戦艦ヤマト」の匂わせについては西崎氏も承諾していたのかもしれませんね。(ちなみにダーククィーン勢力と戦う松本零士先生の漫画「新宇宙戦艦ヤマト」が発表されていたのは裁判前の2001年でした)
さて、「宇宙戦艦ヤマト」匂わせですが、特に第26話では敵勢力との艦隊戦シーンが多いので「宇宙戦艦ヤマト」の艦隊戦を観ているのかと錯覚するのですが、「さらば宇宙戦艦ヤマト」劇中でのデスラー艦艦橋でデスラー総統と対峙する古代のシーン、ミルの凶撃から身を挺する森雪のシーン等どこかで観たような名シーンが多数演出され、「銀河鉄道」なのに「宇宙戦艦ヤマトシリーズ」を観ている気が更に強まるのです。
そして、匂わせの極めつけはセクサロイドのユキに組み込まれているDNAチップのオリジナルモデルである女性についてです。レイラがユキのオリジナルの彼女は『遥か昔、たった一隻で母なる星を侵略者から守った船に乗っていた』と語っていたり、ユキがその奥底に眠るオリジナルの女性の意思を強く感じる時には「宇宙戦艦ヤマト」航海時の太陽系や地球、そして地球の都市がイメージとしてユキの脳裏に現れます。
↓セクサロイド・ユキと同色のヤマト制服を着用する森雪
そして、ついには26話中盤で森雪の子孫と思われる旧太陽系連邦所属(ツイストバレルとのこの戦闘は時系列的には「銀河鉄道999エタノール編」よりも後日の出来事になるのでもう地球は消滅していると思われます)の識別番号M3199-1銀河系連合艦隊旗艦の医療担当、森からSDFビッグワンにシークレット・アクセスコード通信が入り、森とユキがついに邂逅するシーンが描かれます。戦況に巻き込まれた銀河鉄道乗客の負傷者の収容要請など業務的な通信後、森からユキへ「会えるなんて思っていませんでした。頑張って私の遠いご先祖さま」の台詞が述べらるのでした。
第2シリーズ終了から15年以上経った現在でも、残念ながらダークィーン・メタノイド陣営との戦いが描かれるであろう第26話以降の「銀河鉄道物語」第3シリーズは制作されるに至っていません。
次回のブログは第2シリーズのTV放送終盤に発売された「銀河鉄道物語~忘れられた時の惑星」を紹介します。
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